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治療から予防へ
これまでの歯科医院は「歯に穴ができて痛くなったら通う場所」「歯がグラグラになってきたら通う場所」と思われてきました。そこで働く歯科医師も「虫歯を削って詰めて」「歯を抜いて入れ歯を作って」という事後的な仕事が最大の患者さまへの貢献だとこれまで思ってきました。
しかしながら、自分の歯で美味しく食べる、自分の歯で気兼ねなく話して、笑うといった生活の質(Quality Of Life)を向上させようという考えが日本の歯科医療においても台頭し始め、今では「予防」という概念が大きな位置を占めようとしています。
スウェーデンを初め北欧諸国は予防診療の先進国と言われています。スウェーデンでは1970年代から国を挙げて「予防診療」への取り組みを行い、明らかに大きな成果を上げてきました。
日本歯科医師会でも予防の重要性を患者さまにPRするために「よ坊さん」なるキャラクターを登場させたり(子ども向き)、歯の情報誌を刊行(大人向き・バックナンバーも含め見ることができます)したりしています。
予防診療について
予防診療は虫歯や歯周病などの問題が起きないように前もって行われる処置です。年に2~3回ほど専門家によるお口の掃除を受けることで、生涯にわたり良い状態が保てるようになります。
痛みが出てからの治療は回数がかかり、麻酔をして歯を削ったり、歯を抜かなければならなくなります。
定期健診に合わせ予防処置を行うことで、いつまでも健康な状態を維持しましょう。
プロフェッショナルケア
1.歯や歯ぐきの状態のチェック
2.(必要に応じ)歯磨き方法や時期・回数・歯ブラシ選択等の指導
3.セルフケアの阻害要因となるプラークや歯石の除去
4.PMTC(歯のクリーニング)と高濃度フッ素塗布
セルフケア
1.適正な場所に対して・適当な時間をかけ・適切な歯ブラシとフッ素含有歯磨き粉で行う歯磨き
2.プラークが残りやすく歯ブラシだけでは取りにくい歯と歯の間へのフロス(糸ようじ)または歯間ブラシ
3.歯ブラシが届きにくい奥歯へのワンタフトブラシの使用
4.より積極的な口腔環境の維持のためにデンタルリンスの使用
を行う取り組みです。
プロフェッショナルケアのために来院していただく頻度は最低でも半年に1回、可能であれば3〜4ヶ月に1回が望ましいです。
セルフケアの頻度は毎日です。理論的には1日1回の歯磨きでプラークは除去できるといわれますが、予防の観点からは最低でも朝と睡眠前の歯磨きが必要と思われます。最近の研究では、食後すぐの歯磨きは歯を痛めやすいため、20〜30分後に行うのがよいと言われています。食後のうがいは口の中に残った食べ物のカスを取るだけでなく、酸性化した口腔内pHを元に戻す手助けをしてくれるのでお勧めします。ただし、うがいだけではプラークを除去することはできませんのでご注意ください。セルフケアの各項目を毎日続けるのはなかなか大変ですが、是非習慣化していただきたいと思います。
虫歯から歯を守る3つのポイント
・虫歯の原因菌が潜むプラークを除去すること
・フッ素で歯質を強化し、虫歯になりにくい歯をつくること
・セルフケアを駆使して、同時にプロフェッショナルケアを上手く利用すること
フッ素の働き
フッ素には
・歯を酸に溶けにくい性質に強化する
・歯から溶け出したミネラル(脱灰)の取り込み(再石灰化)を促進する
・虫歯の原因菌(ミュータンス菌)が行う酸産生(これが脱灰に繋がる)を抑制する
という優れた働きがあります。 今では日本で販売されている歯磨き粉の殆どにフッ素が含有されています(成分表示上のフッ化◯◯というものです)。
ただし、日常で用いるフッ素の量には限度があります。歯科医院でのフッ素塗布法で用いられる材料は医薬品で、高濃度のフッ素を一度に歯に取り込むことができます。
当院の予防診療では、歯のクリーニング(PMTC)終了後にフッ素塗布を行っております。
いなほ歯科の予防診療では、「歯の治療が終了すれば通院は終わり」といった関係から「治療が終了してからが本当の付き合い」と思っていただけるような患者さまとの関係を目指しています。