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歯科口腔外科とは?
歯科口腔外科領域の対象は、原則として、口唇、頬粘膜、上下歯槽、硬口蓋、舌前2/3、口腔底に、軟口蓋、顎骨(顎関節を含む)、唾液腺(耳下腺を除く)を加える部位です。何だか専門用語ばかりで難しいですね。簡単にいえば、唇と口をのぞいた時に見える組織、そして顎や顎関節の異常に対して主として外科的な(時に内科的な)処置で治療を行う部門です。
当院へは、親知らずの炎症・外傷・顎関節の異常・口内炎やできものができたといったことでお越しになる方が多いです。
親知らず
正式名称は「第3大臼歯」といいます。口の中では一番奥に位置する歯です。人によってはこの歯が先天的にない場合もあります。俗に「親知らず」と呼ばれ、他の歯と違ってこの歯が生えていることに気づく頃には親離れ(子離れ)していることからきています。また、「智歯(ちし)」とも呼ばれ、物事の分別がつく頃に生えてくることが語源となったようです。英語では「Wisdom Tooth」と表現します。「Wisdom」とは、知恵、知識、分別を意味する言葉です。
最近では、親知らずがまっすぐに生えている人をみることが少なくなってきました。顎の骨はヒトの進化の過程で小さくなる傾向にありますが、歯の数とその大きさは変わらないため、親知らずのためのスペースがなくなってしまうことが原因です。これにより親知らずが斜めにはえてきたり、横になったまま顎の中で大きくなることが多いようです。個人差はありますが、一般的に親知らずは20代後半まで成長を続けるといわれます。
親知らずが引き起こす問題
1.歯ぐきが腫れ、痛みがでる
汚れが持続的に溜まると、中にいる細菌により炎症が引き起こされ、歯ぐきが腫れてきます。ここで体調を崩したり、寝不足やストレスが加わると身体の抵抗力が弱まるため痛みが出るようになります。この状態を「智歯周囲炎」と呼び、親知らずの周りにある組織に炎症が起き膿がでた状態です。親知らずの周囲には、喉や咀嚼筋(食物を咬み砕くための筋肉)があり、それらの組織に炎症が及んでくると、リンパ節や顔面が腫れてきたり、つばを飲み込むだけで喉に痛みが出たり、口を開けたり閉じたりすることが困難になってきます。
2.虫歯を起こしやすい
親知らずは口の中では一番奥に存在する歯なので、歯磨きをしてもなかなか汚れを落とせない場所です。親知らずが斜めに生えていると、一層汚れはたまりやすくなり、親知らずは虫歯になってきます。
左の写真は抜歯後の親知らずです。大きな虫歯が確認できます。虫歯が更に進行すると歯はボロボロになり、抜歯が困難になってきます。
親知らずは手前の歯にも虫歯を引き起こします。左のレントゲン写真をご覧ください。
親知らずが斜めにはえたため、汚れが慢性的にたまり、手前の歯に大きな虫歯ができています。親知らずが虫歯で大きくなった穴に向かってのびたため、食い込むような格好になっています。
3.歯並びに影響することがある
全ての親知らずが歯並びを悪くするわけではありませんが、斜めや横に生えた親知らずは、歯を前に押しだす傾向があるため、前にある歯の歯並びに影響がでることがあります。
親知らずの抜歯について
対応可能な親知らずは、当院で抜歯を行うことを原則としています。しかし、例えば顎の骨に埋まっていたり、神経に根の先が接していたり、根が湾曲していたり、内科的な疾患をお持ちで総合的な管理を必要とするケースについては、関東労災病院を始めとする総合病院の歯科口腔外科に紹介させていただくことがあります。
外傷
院長は近くの川崎市立西中原中学校の学校歯科医を拝命しておりますが、中学校では部活動中の受傷、また近隣の小学校・幼稚園・保育園からは遊戯中の転倒等での受傷が多いように思われます。
外傷による歯牙脱落はできるだけ早期の手当てが再生のカギとなります。抜けた歯が汚れていなければ、可能であれば元の穴に戻してご来院ください。これにより止血も同時に図れます。地面に落ちて砂がついたりした場合は、軽く水で流して速やかに口腔内に入れた状態でお越しください。根元をゴシゴシこすることは厳禁です。
小児はパニックを起こしやすく、口の中に入れておくことがかえって危険になります。歯科用の保存液(当院にて販売しております)がない場合は、牛乳或いは生理食塩水に歯を浸してお越しください。
外傷による出血や打撲も当院でできる限りの対応をいたしますが、大出血や顎の骨折や脱臼、意識混濁がある等、重篤なケースは119番へ救急要請を行うか、救急対応を行う総合病院への直接の受診をお勧めします。
スポーツ時の外傷の予防には、自分自身の歯型にあった「スポーツマウスガード」の装用が有効です。当院では個々人の歯型に合ったオーダーメイドのマウスガードを作製していますので、ご相談ください。費用は保険外の自由診療となります。
顎関節の異常
関節症は「あごが痛む(顎関節痛)」・「口が開かない(開口障害)」・「あごを動かすと音がする(顎関節雑音)」の3つの症状のうち1つ以上の症状があって、智歯周囲炎(いわゆる親知らずの痛み)や顎骨炎・急性の外傷等、顎に関する他の疾患がない病気です。
当院では日常生活における習癖の改善指導・投薬・スプリント療法等を行っております。
通常安静時には上下の歯はわずかに離れており、1日のうちに上下の歯が噛み合わさる時間は、食事や言葉を発する際を合計しても20分程度といわれています。すなわち、1日の大部分は(睡眠時も含めて)唇を閉じてはいても、歯と歯が接触していないということになります。
例えばご自身でほおづえを行ってみましょう。そうすると、上下の歯を接触させて顎の周囲の筋肉に力が入っていることがわかります。このような状態をTooth Contacting Habit(TCH)と呼び、過度なTCHが顎の周りの筋肉を緊張させ、ひいては顎関節症を引き起こしているということがわかってきました。
日中のTCHに対して睡眠時の歯ぎしりやくいしばりも大きな原因となります。該当する方には睡眠時に専用のスプリント(マウスピース)の装着を行うことがあります。費用は健康保険が適用となり、5,000円程度(3割負担の方)です。
また院長は睡眠時無呼吸症候群連携治療協力医です。医科の先生の紹介状のもとで睡眠時無呼吸症候群治療用のスプリントを作製いたします(保険適用)。詳しくは主治医の先生とご相談ください。
できもの
口腔内のできものについては、歯ぐきにについては根の病気に伴うことが多く、また、舌や頬粘膜についても、咬傷や火傷(やけど)・体調不良による口内炎が多く、それぞれ原因となる疾患の治療や軟膏の塗布等で対処できるもの多いですが、稀に腫瘍や嚢胞といった疾患がみられることがあります。
当院では決して先入観にとらわれず、あらゆる可能性を考慮して診断にあたるようにしております。また、歯科の治療で来院された患者さまで、ご本人は自覚症状がないにもかかわらず、治療の際の目視やレントゲンにより、別の箇所の大きな異常を発見したこともありました。
当院は川崎市歯科医師会の口腔がん検診登録医療機関です。
また、最近は舌痛症といって、目に見える明らかな異常はみられないものの、舌の灼熱感やピリピリした痛み、違和感等を感じる患者さまを診ることも多くなっています。お口の中に何か心配な症状・兆候を感じられましたら、小さな不安や心配でも構いませんのでご予約ください。
病診連携(紹介体制)について
最寄りの関東労災病院と綿密に連携している他、川崎市立井田病院・昭和大学・鶴見大学・東京医科歯科大学等と連携をとっております。それぞれの病院の得意な領域・患者さまの利便性・ご希望に沿った施設を紹介する体制を整えております。